21の瞳

21歳。

20代の始めの一年。


21歳の年の年越しの日、僕はロンドンにいた。

小雨が降り続ける寒い夜。午前0時の鐘の音を聴こうと、煌々とライトアップされたビック・ベンの下に立っていた。


大きな時計の文字盤を見上げる。長い針が短い針に近づくのを見続けていた。もうすぐだ、もうすぐだ。それは短いようで、長い時間。


ラストスパート、長針が短針を抜き去りにかかっているのを眺めながら、僕は自分の過去と現在、そして未来に思いを馳せていた。今までの20年。今の僕。自分の先に広がる未来。


「思えば、遠くに来たもんだ」

遠い異国の地がそう思わせたのか、傘が無く雨に打たれた頭で妙に冷静にそんなことを考えていた。


今、自分はここに立っている。この日、この時間、この場所に。

僕の足は、過去の自分を踏みしめている。

時が来れば、ここから歩き出す。その足で、未来の自分へ向かって。


いよいよ針が重なり、1つの矢印となる。

僕はそれを見る。視線の向こうに記された矢印を見た。


今、僕の瞳はその先に何を見るのだろうか。今までは。そしてこれからは。

自分にしかわからない何かと、自分にもわからない何かを瞳に映し、僕はその場を去った。

不定形の決意を胸に秘めながら。


21歳。僕の20代の始まりはそんなふうに始まった。

21歳。吉澤ひとみの20代はどのように始まるのだろうか。

その瞳には、何を映しているのだろうか。



21歳の誕生日、おめでとうございます。