展望

昨日本当に久しぶりに、ハロー!プロジェクトの深夜番組『娘DOKYU!』を観ました。

ミュージカル『リボンの騎士』へ始動したということで個人的に興味を持って、と言いたいところですがたまたまテレビをつけたらちょうどやっていたという脱力系の自分。


番組の内容としては娘。メンバーと美勇伝3人が集まって演出兼脚本の方の話を聴くという内容だったんですけれど、個人的に非常に心動かされる光景でした。


「演出家の言うことは絶対きいてもらう」

それが演出脚本の方がキャストに伝えたい内容でありました。一見偉そうで強行のように見えるこの意見、この場合においてとても納得できるものであると思いました。言い方も厳しくも愛情が感じられる熱がこもっていたし。


もともと舞台表現に関わっていた視点から言うと、演出家にはいろいろなタイプがあれど大きく分類すると2パターン。柔と剛。この2種類。

自分で持っている核の演出を一気には見せつけず、キャストに少しずつヒントを与えていき、しかもキャストの力にも触発されどんどん形を変えていくタイプが柔。

最初からドンと演出意図を打ち立て、それでもってキャストに課題を与えて考えさせつつ、緻密に思い描く完成形へと導いていくタイプが剛。


この2つの演出家タイプのどっちがいいとかというのはないと思うし、キャスト視点から見ても、好き嫌いはあれどどちらも非常にやりがいがあるリーダーであると思うんです。

でも、環境的状況的に見ると柔より剛のほうがいい場合もあるし、その逆もありうる場合がある。


今回『リボンの騎士』の演出家の方は「剛」タイプであります。これは、「環境的に」現在の立ち位置のモーニング娘。美勇伝さんたちが、「状況的に」このタイミングであえてミュージカル公演をやるという状況にとっては、吉兆であると思います。


キツイこと言うとね、今のハローって「風通しが最悪」なわけ。

ハローの子たちはみんなすごい頑張り屋。努力してる。

ファンも熱い。みんなウザイくらいに熱くて、ハローとったら何も残らねえだろっていうくらい全力。


たださ、それ全部ハローらへんの中だけの話なんだよ。


ハローのみんなはハローの中だけで頑張ってる。

目標は(ハローの)あのひとです、ライバルは自分です、ってだいたいみんなそう言ってる。だれか全く違う自分の知らない世界の人に「てめえこのやろう、見てろよ!」って憤ることって皆無でしょ。

(だからそういう意味で、フットサルという試みは多くのファンに受け入れられたんだと思う。フットサルという全く違う世界。スポーツという特性上、実力以上のものはなかなか出せないし、頑張ったって負けは負けの世界。そして敵はハロー以外。そういう越えがたいハードルの高さっぷりが見てて楽しいわけですよ。)


ファンだって、何でもハロー視点からものを考える。

一般的にどう見えるか、どんな歌なのか、どのくらいカワイイのか。ハロー大好きになっちゃうとほとんど「ハローかそれ以外」くらいの見方でしか見れない。もちろん一生懸命傍観して冷静に分析しようと試みるんだけど、そういうの自体がもうハロー中心になってる(僕も含む、全部自戒です)。


たまには。

全く違うところから来た人間に、首根っこ押さえつけられて身動きとれずジタバタするのがいい。


娘。さんたち始め、ハローのメンバーはみんな真面目です。しっかりしてるし飲み込み早いし、プロ意識だってある。始めは大人たちに怒られてきたでしょうけど、持ち前の努力とパワーで成長して輝ける星になった。多少バックアップはあれど「自力」で。


でも、そのあとは?

けっこう何でも出来るようになって、大人の手を患わせなくなった今は?

今でも、しょちゅうしょっちゅう怒られてるの?


昨日の『娘DOKYU!』の放送であの場にいたメンバーたちは、皆一様に「自分たちで目標を持って成長できる、またその意志がある」子たちです。それはわかってる。

ただ、それだけに、風通しが非常に悪いと思うんです。自分たちである程度やっていけるところが逆によくない。ときどき僕はすごいそう思う時があるんですね。まだ若い人たちだから、誰かとてつもない壁になってくれたっていいじゃないか。その機会は与えられるべきですよね。


リボンの騎士』そしてその演出家の方はその壁になってくれそうです。

愛情はある。でもすごく厳しい。全力でやってても「それだけか?」と言ってくれるでしょう。「もっともっと」と演者も気づかないくらいの力を引き出してくれるかもしれない。


モーニング娘。の、美勇伝の個性?そんなものいったん潰しちゃってもいいような気がする。「手塚治虫×タカラヅカ×モーニング娘。美勇伝」という宣伝に踊らされることなく、一表現者としてゼロから初め裸でぶつかり合ってこそ見える世界がある。

この意見が僕のいう風通しが悪いファンの意見だっていうのはわかってるんですが、メンバーには一度その高みに登って遠くを眺めてほしいんです。


そして思い切り外の世界を感じて、「ああ、自分がいた所はぬるま湯だったのかもしれないな。だってまだまだ行けるんだから」って思って欲しい。文字通り殻を破ったみんなを見たい。そしたらその時こそファンも目覚めるかもしれません。自分は誰が好きなのか、もう一度考えられる。


というわけで、今回ミュージカルで「剛」タイプの演出家がついてくれたことにすごく心が動かされました。

モーニング娘。美勇伝も、そして僕も、横面を思い切り張り倒されたい。たまにはその頬の痛みが気持ちいいのであります。