能子の役の複雑さ

能子の役の難しい点、それは半分源氏半分平家の血が流れている所です。いつも気にかけてくれていた兄に対する想いと、育ててもらった平家への恩の間で揺れる心。この表現が難しい。


その最も難しい箇所と言えるのが、兄・義経に、能子がかばい後に助けられた子供のことを尋ねられ嘘をつくシーンです。

周囲に「入水したのは安徳天皇」と思われているなか、義経は「本当は入水したのは弟の守貞親王で、助けられたのが安徳天皇ではないか」という疑問をひとり抱いていました。


そこで義経は妹の能子にかばっていた子供のことを尋ねました。能子はそこで平家の人間として「守貞親王だ」と嘘をつきます。

ここに能子が嘘をつかなければならない辛さが見えます。やっと再会した兄に嘘をつかなければならない。本当は一緒に暮らしたいのに、そうは出来ない。兄・義経も全てをわかっていてそれ以上は追及しません。


嘘をついてしまった能子が、立ち去る時にこれだけは伝えたいという兄への想い。


「兄上がいることがこれからの支えでございます」


号泣する準備は出来ていました。ウワーン!


能子に関しては出番がないというので心配していたのですが、ちゃんといい見せ場があったし、何よりもその見せ場を真摯な姿勢と努力でいいものにしたと思います。そういう役者の姿勢って画面に出ますからね。

もう立派に女優・後藤真希と言えます。