修羅の帰還

Previously on Street of Crocodiles …



身も心も疲れ果てた兵士はついに除隊を迎え、最愛の妻と平穏に暮らしていた。

TVから流れてくる歌声。



会いたかった 会いたかった 会いたかった YES



「最近は何にでもAKBが出てくるよね」

「そうだね・・・」



華やかなステージに乱舞する十数人の美少女たち。
しかし老兵の双眸には虚空以外に何のカタチも映しておらず、心には虚無が広がるばかりであった。



(誰が誰やらわからないし、楽曲も全くピンと来ない・・・)

(なんか・・・別に会いたくないな・・・・)



あの日あの時あの場所に、心は置き去りにされたまま、戻ってくることはない。
老兵が過去に負った戦争の傷痕を知らない妻との平和で幸せな日々ーーーそれは永遠に続くかと思えた。



今なお戦地にいる2人の生けるレジェンド*1から贈られた、何片かの動画を見るまでは。





もうそこに老兵の穏やかな表情は無かった。
大きく開かれた目には生気が満ち溢れ、固く握りしめた手は持っている端末を破壊せんばかりに力が籠められている。

老兵の貌は、いまや最前線にいる戦士へと化していた。間髪入れず、彼の元へ二度と引き返せない戦地への片道切符が届いたのだ。

老兵、いや狂戦士という表現が相応しいであろう彼は、夥しい傷の残る顔に不敵な笑みを浮かべ呟く。



「さて、往くか・・・・」



もう彼の脳裏にはひとつの願望しかなかった。



信玄餅になりたい、と。


To be continued …

*1:[http://www.micaplus.com/blog/:title=mica神], [http://www.relaxoneself.com:title=mosh神]